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あの時一緒に、列強種族から逃げだそうとした半数は捕えられ、殺された。
あの暖かい腕で抱いてくれた、母上も。
柔らかな腕にトロウルの冒険者の屈強な腕が食いこみ、瞬間その場所の骨が折れたことが知れる。悲鳴と共にあの腕がボクを突き飛ばして、ボクは幼くして共に苦渋を舐めた大柄な友人の腕に収まる。
『かあさんっ……やだぁ、かあさん!』
『今は見ちゃ駄目よキスイ! 逃げることだけ考えて!』
『わたっ……わたしが、かあさん助けなきゃ!』
『冒険者に奉仕種族が敵うと思ってるの! また生贄として捕まるわよ!』
言葉だけが脳裏を反芻して、やがてその双眸はゆっくりと開かれた。
見上げるはテントの天井。嫌な夢を見た、と一人天井を睨んでいると、にわかに集落が騒がしくなったのが聞こえた。
集落と言っても20人程度の、奉仕種族の集まりだ。絞り尽くされるものはとうに絞り尽くされたというのに、何故野盗はこんな場所を狙うのだろう。予程見る目が無いのか、生活に困っているのか。
悲鳴が聞こえて、慌ててテントの入口から外を窺うと一人の仲間が明らかに野盗と思しき集団に振り払われ、地面に膝をついていた。
「なんだなんだぁ? ここはぁ? 女子供しかいねぇじゃねぇか!」
「そっちの方が好都合じゃねぇの、食って殺して金取っておしまいでしょう。いっつも」
「そりゃあそうだ。おい女」
野盗のリーダーと思しき男が先程振り払った女性に剣の矛先を向ける。
「最初はおま……」
いいかけたと共に、その野盗の脇腹に剣先が食いこんだ。
テントから奉仕種族であるとは思えないスピードで、脇に大ぶりのナイフを抱えたキスイの体当たりの一突きだった。
リーダーの突然の襲撃に仲間達が一斉に武器を手にするが、その行く手をやはり武器を携えた集落の女性数人が塞ぐ。
一方ナイフで野盗のリーダーを突いたキスイは、傷口を広げるようにしてナイフを捻る。苦痛の表情と共にキスイを見降ろした野盗は、自身を傷つけた人物が子供だと悟り激昂する。
「この、ガキがぁぁぁ!」
地面に叩きつけられた剣を紙一重でかわし、キスイは手直にあった木材を持って野盗の背後に回ると足場を蹴ってそのまま後頭部を得物の勢いのままに振りおろした。
野盗は脳震盪でも起こしたのだろう、地面に伏せる。その頭を、キスイはぐっと踏みつける。まるで、地面に擦り付けるように。
「去れ。さもなくば、殺されても文句は言うまい?」
子供とは思えない冷徹な声がその身体から絞り出され、またリーダーの姿を目視した野盗の集団は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。ここに残った野盗は、リーダーの彼一人。
が、その残り一人でさえもキスイは躊躇いなく脇腹から抜いたナイフで喉を切り裂き、殺した。
生き残るためには、襲われたからには応戦しなければならない。そして、その遺品で暫くの生活を潤おす。それが、この集落の生活サイクル。
遺体から遺品を奪うだけ奪った頃合いに、一人の女性が濡れた布を持ってキスイに駆け寄ってきた。
「キスイちゃん、あんまり無理しちゃ駄目よ?」
そう言いながらキスイの返り血を拭うのは、あの日キスイを抱き止めた友人だ。
「……でも、皆の命は……母上が命をかけて遺してくれたものだから、ボクに守る責任があるよ」
そう微笑んで言うと、友人は痛ましいような顔をした。
そしてそのまま、抱き締めてくれる。その体温は年齢こそ違えど、母上のもののようで安心した。
「キスイちゃん、変わっちゃったよ。お母さん殺された日から、変わっちゃった。急に言葉遣いも服装も男の子みたいになっちゃったし……」
「だって、小さくても男がいるってだけで違うだろう?」
「……馬鹿!」
そう言いながらも抱きしめてくれる彼女の体温は、やはり、暖かい。
そして、ボク達が奉仕種族として働いていた列強種族、トロウルが『同盟』の冒険者によって殲滅させられたと知ったのは……随分と、後の話だった。
その様子をぼんやりと眺めながら、グロウスは自分の屋敷でもある【花零れの宿】の軒先で茶を啜っていた。
落ち葉がひとつ、ふたつ。
みっつの木の葉が地面に落ちた時、グロウスはことりと湯呑を脇へ除けてから背後の気配へと向かって言葉を放つ。
「久しぶりじゃのう」
その気配は吃驚したと言わんばかりに一歩後ずさる。が、すぐに敵意は無いものと判断したのか畳を擦る音を響かせながらこちらへとやってくる。本当に、ランドアースの建築物に慣れた同盟の冒険者は楓華式の建物の中を歩くのが下手だ。
「わしがこっちに越してきてから姿も見せんかったのに、どういう風の吹きまわしじゃろうか?」
見上げると、一人の冒険者。
「いや、だから。グロウスさんが前の住居に居なかったからこっち探したんだって。森の結界もいつの間にか消えてるし、連絡くらい頂戴よ」
「ほっほ、そうだったかえ?」
使わないまま伏せっておいた湯呑をひっくり返し、茶を淹れて勧めるとその冒険者はおずおずと隣に座った。
茶請けの菓子も出して見せると、冒険者は複雑そうな顔をする。
「……グロウスさん、都会慣れして丸くなった? 前はお茶も淹れてくれなかったのに」
だがその言葉は聞かなかったことにして、グロウスは最近手に入れた和菓子の説明をする。
「この和菓子はのう、楓華から同盟にやってきた菓子職人が作ったものだそうじゃ。桜餡に切り込みを入れ、花の花弁のようになっとるじゃろう。まさに芸術の細工じゃのう。街に出店しておる故、今度出向くが良い。ああ、地図が必要じゃの、土地感がわからんでわしにはまだ地図は書けぬ故、今度案内しようかのう」
まるで雪崩のように言葉を発するグロウスに呆気に取られたのか、冒険者は「わかった」と一言呟いてから茶を啜った。
平和な時間が刻々と流れ、やがて夕焼けに空が染まっていく。
隣に座った冒険者も飽きてきたのか、欠伸をしたり腰に携えた武器を弄っていたり湯呑を弄っていたりしたが、ついには呆れたように言葉を発した。
「信じらんない。微動だにしてないじゃん。こう、身体動かすとか本読むとかしないで退屈しないの?」
「年寄りを舐めるでない。運動なんてしてぎっくり腰にでもなったらどうするつもりじゃ」
ならないと思うんだけどなぁ、と冒険者は呟いてから立ち上がった。そのまま伸びをして、左右に上半身を捻る。
「……もう、行くのかえ?」
「うん。正直あんま用は無かったし。実際お茶飲んでボーッとしてるだけだったし」
「そうかえ」
そして、やはり上手とは言えない畳の擦り方をしながら冒険者は背中を向け、玄関へと去っていく。
その背を見送るようにグロウスは立ち上がると、玄関までの見送りをした。
冒険者は玄関の戸を開けて、去ろうとする間際――ふいに振り返る。
「やっぱり変わったね、グロウスさん。冒険者向いてんじゃない?」
「ほっほ、森から引っ張り出してくれたおぬしのおかげじゃよ」
そして二言三言言葉を交してから、その扉は閉められた。
グロウスは一人になった屋敷の中、さて、と仕切り直すようにして言葉を発してから――いつものように、蝋燭に火を灯してから書庫へと籠った。
ジェミニとキスイはIC完成待ち中。
ジ「僕は普通ICと笑顔IC完成待ちだよ」
キ「ボクは普通ICと照れIC ……背後、何でボクは真っ先に照れICなんだ。サリトもグロウスも普通ICの次は笑顔ICだっただろう」
RPの関係上?
グ「というかわしのICは一応読書ICなんじゃがのう」
サ「はっは! ICどころか称号変更さえして貰えてない私を見習うといいよ! というかキスイはIC用意して貰えるだけありがたいのさ! グロウスなんか私と同じ自旅団引き籠りの癖にIC3つも持っててずるいよ!」
グ「……さり気なくわしへの嫉妬も混じっとらんかえ?」
というかこのブログに載ってる人達はBU持ってる時点で十分果報者だと思うんですが。
サ「メインがアトリエ3ページだっけ? イベピンも1つ完成待ちなのに3つ持ってるし、BU8枚にSD7枚。まぁぶっちゃけ私の従弟なんだけどさ!」
キ「サブメインもBU5枚持ってるな」
ジ「果報者って言葉が怪しいね……」
グ「メインはもうすぐDG全開らしいしのう」
キシ「単にぃ、★の比重が違うだけよぉ。でしょぉ?」
フルボッコか!
グロウスはそんなに強く言えない筈だ! IC3つにDGだって開けてるし!
グ「潜ってないがのう(茶を啜り)」
ぶっちゃけ、多い。
「それで果報者、というタイトルなんだね」
「茶会というからには茶は出るんだろうな?」
「キシュ、紅茶がいいのよぉ」
「わしは緑茶がいいのう……」
「あは! ティーカップで緑茶を飲むか湯呑で紅茶を飲むかの二択になりそうだね!」
「……両方用意すればいいだろう(溜息)」
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花愛で人・グロウス・イヴリット(a73488)
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外見年齢25歳 男
自旅団引き籠りドリアッド。実年齢は90↑。
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自旅団引き籠りのヒト。サイトで紹介しているレイン・クラウジア(a35519)の従姉にあたる。
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身内旅団引き籠り、ちょっと出張のエルフ。元貴族。
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身内旅団引き籠り、ちょっと出張のドリアッド。傍観者の名に相応しく、闘技場・DG・戦争は基本的に参加しない。
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